el:ment×アトリエシムラ 植物の生命の色で染めたシルク糸遣い 桐生刺繍(しゅう)イヤカフの会〈片耳用〉
お申し込み番号:409312
月1個 ¥6,000 ( +10% ¥6,600 )
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- 日本製
レポート
el:ment×アトリエシムラ お披露目会
Text : Sara Ogawa


トントン、シュッ、トントン、シュッ、心地好いリズムで手機の音が鳴り響く。祖師谷の商店街を抜け、閑静な住宅街にひっそり佇む民家の扉をひらけば、そこは温もりと活気に満ちたアトリエだった。


アトリエシムラは、紬織の人間国宝・志村ふくみさんの芸術精神を受け継ぐ染織ブランドだ。今年で102歳になるというふくみさんの営みを次世代につなぐため、孫の昌司さんが2016年に立ち上げた。民藝運動の流れを汲んで染織の世界に入ったふくみさんは、「紬糸」「草木染め」「手機」という原則のもと、独自の作品を生み出してきた。一反つくるのに3ヶ月ほどかかるという紬織に浮かび上がる色彩や紋様は、彼女の心象風景を映している。


昌司さん曰く、ふくみさんは好奇心の塊だという。染織の奥深い世界に在りながら、若い人たちの文化にも関心を持ち、精神はひらけている。その姿勢があるからこそ、染織の新しい価値を創造するアトリエシムラも、前に進むことができるのだろう。
今回、ふくみさんが過去に織った作品の裂よりインスパイアされたオリジナルテキスタイルで、2種類のワンピースが生まれた。ひとつは、華やかなチェックのパターンが目を引く『色と光のこころみ』。草木染めの豊かな色彩が浮かび上がるだけでなく、その重なりの濃淡によって見事に「光」が表現されている。春のやわらかさ、夏のまぶしさ、秋の清々しさ、冬の静けさ……どの季節にも寄り添い、違った趣が楽しめるだろう。もうひとつの作品は『紫白段』。染織の世界で紫は、高貴な色として特別な存在なのだという。また、染料の紫草はふくみさんが幼少期を過ごした武蔵野でも自生しており、彼女にとっても思い入れのある色だ。こっくりと深い紫のなかに、一筋の白い線が光る。その輪郭でゆらぐ「絣(かすり)」の表現が、人の手の温もりを宿している。


アトリエシムラとel:mentとの妥協のない綿密なやりとりを経て、ふくみさんの芸術精神を新たな形で昇華したワンピースが完成した。袖を通してみれば、軽やかな着心地とゆったりしたシルエットでありながら、そのデザインに込められた情熱に、スッと背筋が伸びる。
さらに実際の染色の味わいにも触れてほしいとの思いから、草木染めのシルク糸で花々を表現した刺繍イヤカフも誕生した。ミモザ、桜、ヒヤシンスと、春の訪れを感じる花々は、どれも目を見張るほどの鮮やかさだ。草木染めは、植物の生命をいただく行為である。 だからこそ、ふくみさんは環境の変化にも思いを馳せながら、自然との対話を重ねる手仕事の重要性を次世代につないできた。


ライフスタイルの変化のなかで、もともとは庶民の営みであった紬織も、今や敷居の高さを感じる人が増えた。手間もお金もかかる産業を守り続けるのは、効率やスピードを求められる現代において容易いことではない。
それでもなお、「生命をいただき、自らの手でつくる」という手仕事に宿る普遍的な喜びや美しさを、アトリエシムラは伝え続ける。今回生まれたワンピースやイヤカフを纏うことで、私たちはその心意気を日常に落とし込むことができるだろう。


左から)アトリエシムラ代表・志村昌司さん 小川紗良さん
小川紗良 / Sara Ogawa
1996年東京生まれ。文筆家、映像作家、俳優。俳優として映画『イノセント15』、NHK『まんぷく』等に出演。初長編監督作『海辺の金魚』は自ら小説化も手がけた。2023年に「とおまわり」を設立。現在、J-WAVE「ACROSS THE SKY」でナビゲーターを務めている。

