一杯のお茶には、それが育った土地の記憶が静かに息づいています。
古くから信仰の山として親しまれ、朝夕の霧に包まれてじっくりと力を蓄えた「竜爪」。
河童の伝説が残るほどの清流と、豊かな大地に育まれた「天竜」。
同じヤブキタ品種でありながら、それぞれの土地が描き出す景色は驚くほど異なります。
遠赤外線火入れによって香りが澄み渡り、忙しい日常の中で呼吸を整えてくれるような、やさしい余韻の竜爪。
対して天竜は、清流のような切れ味のある渋みが心地よく、お湯の温度でくるくると表情を変えながら、沈んだ気持ちを凛と切り替えてくれます。
イラストレーターのYACHIYO KATSUYAMAさんが描いた産地の風景とともに、二つの山を巡るひとときをお届けします。
「富士山はとても美しい。けれど、一度登ってみると、さらに美しく見える。」
ある登山家が語ったように、土地を知ることで、その一杯はより深く心に届くものになります。二つの産地が織りなす個性を、どうぞ湯呑みに注いで、ゆっくりとお愉しみください。